目次賃金をめぐる知識と実務>賃金とは


第3章 賃金をめぐる知識と実務

  
 労基法上の賃金とは,「賃金,給料,手当,賞与その他名称の如何を問わず,労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」をいいます(一般に労務関係の法律では,賃金の定義を労基法と同じように規定しています)。
 したがって,賃金であるかどうかを判断する場合には,1使用者が支払うこと,2労働の対償であること,3名称にとらわれないこと,の3つのポイントが基準になります。
 それぞれのポイントについて,もう少し詳しくみておきましょう。
(1) 使用者が支払うこと
  使用者が支払うというのは,使用従属関係において労働の対償として使用者が労働者に支払うことをいいます。ですから,旅館や料理店などの女中や仲居などが客からもらうチップは賃金とはいえません。
  ただし,客からもらうチップのみで生活している女中や仲居については,チップ収入を受けるために一定の営業設備の使用が認められていれば,その使用しうる利益が賃金とされます。
  なお,客から支払われたサービス料を一括して使用者が受け取り,これを後で労働者に分配する場合の分配金は,客が任意に労働者に手渡すチップとは異なり,使用者が支払う賃金とみなされます。
(2) 労働の対償であること
  労働の対償であるかどうかは,労働者に対して支払われる金銭や物などが労働の対償として支払われるかどうかによります。一見わかりきったことのように思えますが,その見極めが困難なケースは少なくありません。たとえば,労働者の結婚あるいは死亡などに対して使用者から支払われる結婚祝金あるいは死亡弔慰金は,賃金とみなされる場合とみなされない場合があります。
  その判定基準は,次のようになります。
1 任意的,恩恵的なものは賃金に含めない
  一般に使用者が任意的,恩恵的に支払う慶弔見舞金などは,賃金に含めません。しかし,就業規則などによって支給要件が明確にされている場合は,賃金となります。
2 福利厚生とみられるものは賃金に含めない
  次に掲げるものは,原則として福利厚生とみられ,賃金に含めないことになっています。
イ 食事(住込労働者が,1日に2食以上支給を受けるような場合を除く)
ロ 住宅の貸与(住宅の貸与を受けていない者に一定額が支給される場合には,その額が賃金とみなされる)
ハ 会社の浴場施設,運動施設のように労働者個人の利益とならないもの
ニ 使用者が労働者を被保険者として団体生命保険に加入し,その保険料を毎月負担する保険給付
  ただし,本来,労働者個人が負担すべき社会保険料や所得税などを使用者が負担した場合には,その保険料や税金は賃金になります。
3 労務提供のための費用は賃金に含めない
  企業が労働者から労務の提供を受けるために当然生じる費用は,賃金にはなりません。これに当たるものとしては,通常,実費弁償とされる旅費・日当,労働者のマイカー借上料などがあります。
(3) 名称にとらわれないこと
  賃金の呼称は,企業によって異なります。特に,基本給以外の手当については,業界独自のものがあったり,一定地域でのみ支給されるものがあるなど多種多様です。また,賃金の中には,現物によって支給されるものもあります。賃金かどうかは,名称にとらわれることなく判断しなければなりません。


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