労働契約とは, 使用者が労働者を雇い入れる際に, 労働条件について両者の間で交わされる契約のことをいいます。 この契約を結ぶことによって,
労働者 (従業員) と使用者 (企業) の間に 「労働関係」 が成立したことになります。 労働契約は, 個別の労働者と使用者との間の契約ですから,
10人の労働者がいれば10通りの労働契約が存在することになります。 この点は, すべての労働者に一様に規定が適用される就業規則や, 労働組合と使用者との間で条項が取り決められる労働協約などと異なります。
ただ, 労働契約の内容が労働者ごとに異なるとはいっても, 就業規則や労働協約の内容に反するようではいけません。 個々の労働契約は, その上位にある集団的労働条件基準
(就業規則や労働協約など) 以下であってはならないとされ, これに反する合意は無効とされます。 これは, 経済的弱者である労働者個人が正当な条件で雇用されることを保障し,
労働者の保護を図るためです。 このほか, 労働契約は, 次のような規制を受けます。 @ 労働条件の明示
労働契約を締結する際には, 使用者が労働者に対し労働条件を明示しなければなりません。 明示の方法は, 文書でも口頭でも構いませんが, 次の事項については書面を交付することとされています。
労働契約の期間に関する事項
就業の場所および従事すべき業務に関する事項
始業および終業の時刻,
所定労働時間を超える労働の有無, 休憩時間, 休日, 休暇ならびに就業時転換に関する事項
賃金の決定,
計算および支払いの方法, 賃金の締切りおよび支払いの時期に関する事項
退職に関する事項
(解雇の事由を含む)
A 賠償予定の禁止 使用者が労働契約の不履行について違約金を定めたり, 損害賠償額を予定する契約をすることは禁じられています。
B 前借金相殺の禁止 労働契約の締結に際して, 労働することを条件に使用者が労働者に金銭を貸し付け, 賃金によって返済させることは禁止されています。
C 黄犬契約の禁止 労働組合に加入しないことを雇用の条件とする 「黄犬契約」 は, 不当労働行為に当たります。 このような契約は, 当然に無効となります。
D 強制貯金の禁止 使用者が労働契約締結の際に, 労働者に社内預金を強制することは禁じられています。 E 3年を超える契約期間の禁止
労働契約の多くは期間の定めのないものですが, 期間を定める場合には, 原則として3年までとされています。 ただし, 次のような例外があります。
その事業や職業訓練に必要な期間の範囲で契約期間を定めることができる場合
一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの
(たとえば, 有期事業の土木・建築工事で, その事業の終期までの期間を定める契約) に就労させる場合 職業訓練のため長期の訓練期間を要するものに就労させる場合
契約期間の上限が5年まで認められる場合
高度の専門的知識等を有する労働者で,
かつ, その高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者を雇い入れる場合
満60歳以上の労働者を雇い入れる場合 |